オレは日向子に惚れてる。
      そう気がつくのに時間はかからなかった。
      オレは生来惚れやすいのだ。宗佑の妻だった菜々子に惚れたのもオレの方が先。ただし、惚れてはもらえなかった。
      オレの幼馴染みでもあり、親友の宗佑。
      昔っから頭のいいヤツで、口数は少なけれども、ガリ勉タイプじゃなく、オレとよくつるんで悪さもした。男から見ても、十分イイヤツだ。
      女から見りゃ、余裕があって、クールで、たまんないんだろうな。オレなんか瞬間湯沸かし器だし。
      それは小学校のミキちゃんも、中学校のマユミちゃんも、み〜〜んなそうだった。
      オレに渡してくるんだよな。「これ宗佑くんに」ってさ…
      オレは比較的女子ともよく話したけど、宗佑はあんまり話さなかったもんな。
      で、菜々子も宗佑に惚れてしまった。
      普通あり得ねえよな?菜々子はオレとクラスメイトで、宗佑は有名な進学高校でちがったのにさ…
      
      唯一オレに惚れてくれたのは元妻のサチぐらいなもんか…
      まあ、何となくつきあい始めて、結婚まで押し切られたけど、オレがいつまでも菜々子ばかり見てたから呆れて出て行っちまいやがった。
      それは…少しは反省してるさ。
      オレも、良くなかったって。
      だから今度こそはって思ってしまったのが日向子。
      まだ大学生だけど、なんにも知らなくて、そのくせ所帯じみていて子育てもうまそうだった。安産タイプの尻してたしよ〜
      何よりも…こう、教え込んじまいたいって欲求に駆られるほど、真っ白なとこがよかったなぁ〜ちょっと気が強くって、一途でさぁ…
      その一途さがどこに向かってるのかに気がついたときはもう遅かった。
      
      また宗佑かよ?
      
      でもオレは今度は負けねえって思った。
      宗佑も菜々子以外には見向きもしないだろうし、日向子じゃ宗佑は無理だって思ってた。
      けどよ、やっぱ同じだったのかな?
      オレが見てた日向子のいいところ、宗佑もちゃんと見てやがった。
      だけどオレに遠慮してるのが判ったよ。
      だったら最後まで遠慮して貰いたかったぜ。
      
      それでも、宗佑は、オレとの友情よりも、日向子のことを優先しやがった。
      まあ、強引なことをしたのはオレだったけど、急に宗佑のヤツ非協力的になるし、こっちが業を煮やして、出向いていっても、日向子はさっさと圭太と部屋に行っちまうし、冗談で「夜這いかけようかな?」って言った翌日には日向子の部屋に鍵がかかってるしよ。
      宗佑のヤツって、思ったね。
      
      だから一世一代の賭けに出たんだ。